ロンドン「SOHO」モデルクラブ探索記 2016年12月某日
「イギリスに来たからには外人を抱いてみたいんですよ」
N氏は悪戯を考えているような笑顔で言った。
俺とN氏はとある理由があり、2人で日本からイギリスまで一緒に行動する事になったのだが、イギリスで何か観光でもしないのか?という俺の質問に対してN氏は前述の言葉を述べたのであった。
既に場所もネットで調べてきたらしく、
「SOHO地区って所にあるようなので是非行きたい!」と強く主張をしてきた。
大英博物館とかは?と尋ねるも、
「歴史とか興味ないんですよ、それより外人抱いた事ないから抱いてみたいんです」と、熱く真剣な眼差しで言い放った。
うーん…外人だったら白人でも黒人でも大丈夫ですか?と俺が問いかけると、
「黒人はちょっと…」と言うので、男らしく白黒抱いてみれば良いじゃないですか!
と押してみると、「確かにやってみなくちゃ解かんないですよね…」
と落ち着いて神妙な面持ちとなった所で、
ロンドンのSOHO地区へ行きモデルハウス(所謂ちょんの間)で白人と黒人の娼婦を抱くというプランが決まった。
SOHO地区というのは、ロンドンの繁華街である、ピカデリーサーカス駅とレスタースクエア駅の間辺りにあるのだ。
この辺りの通りの建物に無造作に「MODEL」と書かれた紙が貼ってあるとの事らしい。
俺はピカデリーサーカスやレスタースクエアはウロウロした事はあっても、
モデルハウスを探した事が無かったので、とりあえずそのあたりを歩き回って探してみるしかなかった。
ピカデリーサーカス駅を出ると「Believe it or not」というビックリ博物館があるので、
その並びのミュージカル劇場が沢山ある通りをひたすら真っすぐ進む。
しばらく行って左折するとSOHO公園があるので、
そこを目指して歩く通り(グリークストリート)にモデルハウスはあるらしいのだが、
ネット情報を元に彷徨ってみたが全く見つからず…
まだ明るいから時間が早すぎたのかな?なんてひたすら往復していたその時、
N氏が「これだ!」と指差した。
そこには小さくMODELと書いた付箋用紙が雑居ビル?的な建物の入り口に貼ってあった。
こんなの全然解らないでしょ!ちっさ!
俺達はその慎ましすぎる文字にあきれながらも中に入った。
映画「タクシードライバー」のラストシーンっぽい寒々しさを感じつつ2階からハーヴェイ・カイテル扮するスポーツ的ポン引きが降りて来そうな気配を感じた為、入口付近で少し待ってみたが気の所為のようだった。
誰も降りてこない事を確認後、緊張しつつも2階へとゆっくりと歩を進めた。
どうやらこの建物は2人のモデルが居るらしい。
入り口にも2人の名前とそれぞれのチャイムがあった。
俺達は最上階の部屋にまず向かい、そこから降りていく作戦で階段を上っていった。
3階が最上階の様で階段を上がって正面に部屋があった。
見た目は普通のアパートの部屋にしか見えないが、チャイムを押すように書かれていたので押してみると、コンシュルジュ役のおばあちゃんが出てきた。
普通の白人、イギリス人おばあちゃんだ…
「今仕事中だから後でまた来てね」と早口で言って来たので、もう1階下の部屋にN氏が降りて行った。
直後、「ノー!ノー!」とN氏が凍りついた様な体で呟いていた。
うん?と思い階下へ降りると、別の白人おばあちゃんがセクシー下着姿でN氏に中に入れと捲し立てているのが見えた。
ショックで固まっているN氏にどうするの?と声をかけると我に返ったらしく、
「ノーサンキュ」とN氏が呟いた途端ドアはビシャリと閉じられ俺達は下に降りた。
N氏は深刻な表情になりながら、「いきなりドア開いて出てきたんですよね。
ビックリしたなあ。悪魔のいけにえかよ」と呟いた。
引っ叩かれて中に引きずり込まれたりしてなくて良かったですよ。
それだったら俺はN氏消えても解らなかったと思うし。
そんな事を話しながら更にふらついていたら、洋服屋の入り口左にチラと紙が貼られているのを発見した。
あった!2件目発見である。
こちらは地下1階に1部屋だけあった。
早速慎重に降りてみる。
腹を括ったN氏が呼び鈴を押すとラテン系の女性が出てきた。
顔はお世辞抜きの濃いめ美人で巨大な胸が強く盛り上がっている。
「オーケー」とN氏が呟いた。
ドアを半開きにしたまま交渉するN氏だが英語が聞き取れないのか、女性の質問に答えられない様子。
どうも20£で一回的な事を言われていた。
暫くして交渉は纏ったらしく、俺はドアの正面に置いてある籐製の椅子に腰を下ろした。
半開きのドアを強く閉める音が響いた。
音楽のボリュームが上がる。
これからスタートの様だ。
音楽が鳴っている間にも客が3人ほど降りてきた。
椅子に座っている俺に話かけてくる。
ビジーだよ。と適当に答えると再び男たちは階段を上がっていった。
自発的にコンシュルジュ的な事をやっていると、10分立たぬ間にN氏と女性が出てきた。
女性はあなたもやらないの?と言ってきたが俺はガイドだから、と言って手を振り去る事に。
N氏は精魂尽きたように、「もうダメですね…」と呟いた。
全ての体力を振り絞り最後まで吸い取られたとの事。
通りのカフェに入りN氏の体力復活を待ち、黒人娼婦を探そうと提案するも、今日はギブアップしたいと泣きを入れられてしまった為、断念する方向に。
とりあえずモデルハウス探索は続けて、その間に気力も精力も戻ってくるかもしれないので、と宥め賺しながら新たな店の探索に。
先程通った道を戻ってみると新たに開けている店を発見。
2階に上がりチャイムを鳴らすとコンシュルジュのおばあちゃんが出てきた。
入るの?と言ってきたので、女の子は?と尋ねると反対側のドアが勢い良く開き、
良く言えばブリトニー・スピアーズっぽい感じの女性が下着姿で飛び出てきた。
N氏の正面である。
ブリちゃんは、「あんた達日本人?すっごいサービスしたげるよ!」と映画的なサービストークと手を上下にしごくパフォーマンスを見せてくれた。
お?これはN氏行くか?と思いきやN氏は力無く「ノー」と呟いた。
俺達はこの辺り見学して回っているのでまた来るかも、と言い店を出た。
N氏にさっきの子可愛いじゃないですか?何で行かなかったんですか?と聞いてみると、「あの子可愛かったけど、肌が赤い湿疹だらけで、絶対ナンカ病気持ってますよ」と暗い目をして言った。
明らかにN氏から疲労感と倦怠感+嫌悪感が全身に出ているのが見て取れたので探索を終了にする事にした。
次回行くならば、全てのモデルハウスが営業している時間(夜ですね)に行きましょうと約束を交わしSOHO地区から立ち去ったのであった。
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初めてモデルハウスの探索をしてみましたが、びっくり箱的要素が面白く、入る入らないは問わず楽しめるイベントだと思います。
もし、この文章を読んだ方でモデルハウスにトライしてみたい方がいましたら、夕方以降の方が開いている所が多いのと、ゆっくり歩いて建物の入り口周辺を見回しながら歩くと良いかもです。
以外な所に入り口があったりしますので…