アッポー
昔、ゲームセンターは不良の溜まり場であったが、そこにあるゲーム達はクリエイティブな光を煌々と放っていた。
80年代当時のゲームセンターの営業形態はユニークで、店内にゲーム機のみが設置されているスタンダードな店やデパートの屋上にあったり、喫茶店のテーブルとしてゲーム機が置かれていたり、駄菓子屋の奥の隠し扉から倉庫に続く道がありその中にゲームが並べられていたり、パン屋の前の路上に1台のみ置いてあったりと非常に自由な環境であった。
現在の様にメジャーなゲームメーカーは既に存在していたが、俺にとっては得体の知れないメーカーのゲームの新作が楽しみで仕方がなかった。
全日本プロレスと新日本プロレスが争っていた時代、中でもキャラクター的に目立っているレスラー8名がゲームオーバーになるまで戦い続けるのだ。
登場レスラーは、
・G・BABUことジャイアント馬場
・INOKEことアントニオ猪木
・HOGENことハルク・ホーガン
・BUCHIEことアブドーラ・ザ・ブッチャー
・A・GIANTSことアンドレ・ザ・ジャイアント
戦い方もキャラに合わせた独特な個性を持っており、猪木やホーガンは必殺技を使う際に決め台詞「何だコノヤロー」「イッチバーン!」と叫び、ジャイアント馬場は攻撃を食らいまくると「アッポー」と悲しげに囀る。
馬場は悲劇のキャラで何故か必殺技が十六文キックや三十二文ロケット砲では無く、ココナツクラッシュというレア技なのにも関わらず、ココナツクラッシュの体勢に入るとバックドロップで返され大きなダメージを負うという非常に扱い辛いじゃじゃ馬にされていた。
他にも、ブッチャーは隠しようのない位デカいフォークを対戦相手の頭に突き刺しこめかみから出血させ、タイガーはソバットやフライングボディープレスの華麗な技で舞い続ける。アンドレは勿論ネックハンギングツリーだ。
特に必殺技のないレスラーなのだが、場外に落ちた時だけ竹刀が拾え、相手レスラーの喉元に必殺の突きを見舞う事が出来た。
ただそうそう場外には落ちないので試みる事も稀な一番使用率の低い必殺技を持つレスラーであった。
その内に攻略法が見つかり、どのレスラーが使い易いかも解ってきた。
攻略方法はこうだ。
ゴングが鳴った瞬間に自分のコーナー側でリング外の方向を向く。
敵レスラーが迫ってきて組み付いて来ようとする所でタイミング良く振り向きざまにパンチをかますと出鼻を挫き止められる。
パンチの連打かトーキックの連打をするとぶっ倒れるので、速攻で起こし更にトーキックを入れまくる。
何度か繰り返すと頭から星が出てピヨピヨし始めるので、距離を取って必殺技の延髄斬りをかます。これを数回繰り返すと相手はKO寸前になるのでフォールをするのだ。
稀にタイミング悪く相手に先手を取られてもブッチャー以外は大体ブレンバスターかヘッドロックをしてくるので返し技で逆転出来た。
999999点。
5~6時間かかった記憶がある。
以降も色々なゲームが出てきたが、エンディングが作られているゲームが多くなり、自分の意志で辞めた!と言ってギャラリーに続きをさせて越に浸るゲームはこのゲーム以降は出来なくなってしまった。